クリスマスが嫌い、新年が嫌い……家族団楽な日はみんな嫌い…
が、家族団楽と関係のないバレンタインデーがなにより大嫌い。
14年前のあの日、クズみたいな両親は自分と妹を家庭教師に押し付けて、二人の世界を過ごしに行った。
そのまま帰らなくてよかったのに、二人は、最悪の中の最悪な形で戻ってきた……
再び目が覚めたら、悠治は病院のベッドにいた。その手に、点滴の針が刺しこんでいる。
「お兄ちゃん!また無理をして!」
彼の目覚めを迎えるのは妹の雪枝の暖かい抱擁。
そして、雪枝の後ろにいる大介の何とも言えない眼差し。
「医者さん呼んでくる」
大介が一歩離れたら、彼の後ろに立っている人が見えた。
雪枝とそっくりの顔を持つ穂香だった。
「よかったですね!雪枝さん!」
「ええ、ありがとう!穂香さん!」
「いいえ、私は何もしていないわ。ちょうど大介さんが悠治さんを運んだところを見て、付いてきただけです」
同じ顔を持つ二人の少女が初対面で、お互いに不思議を思っていても、すぐ相手から親しい感情を覚えた。
悠治はちょっと複雑な気持ちで二人を見守っていた。
「あら、雪枝、何時分身術を習得したの?」
突然に、大人の女性声が部屋に入った。
「黒河さん…分身じゃないの。こちらは小日向さんです」
「ごめんね、最近オカルト絡みの事件が多くて、ついに――」
その女性が穂香に軽い挨拶をしてから、悠治のベッドの前まで来た。
長い黒髪にスーツ姿の凛とした女性は、お見舞いプレゼントっぽい白犬のぬいぐるみを抱えて、捨てられた子犬を憐れむような目で悠治を見下ろした。
「黒河さん、なんで……」
悠治は体を起こそうとしたが、黒河と言う女性は犬のぬいぐるみを悠治の顔にぶつけた。
「!!」
「お前がダメだからでし